総長っていったい何をしているのか、疑問に思っている皆さんも大勢いるかと思います。ここでは、私が日々取り組んでいる仕事やその中で感じたことなどを、自由闊達に紹介していこうと思っています。
11月30日
本日は東海国立大学機構の経営協議会がありました。通常であれば、多くの議案があるのですが、今回は議事はそこそこに、名古屋大学の視察に出かけました。
まず、最も新しい建物であるEI創発工学館と、アバターを使った最先端の講義室を体験できる情報学研究科の長尾確教授の研究室に二手に分かれて訪問しました。
長尾先生の研究室では、ゴーグルをつけてVR(仮想現実)を体験しました。視線によって360度講義室の中の向きを変えてみる、また、ひとの脳の3次元モデルを上下左右、さらにはカットしてみるなどの体験です。すでに医学部の授業の一部では使われているとのこと、3次元構造をバーチャルにさまざまな視点から見ることができるので、教育効果が大きく上がりそうです。
EI創発工学館では、建物自体の説明を工学研究科の恒川和久教授にしていただき、また、中に入っている代表的な研究室として、機械工学がご専門の長谷川泰久教授(未来社会創造機構所属)のところを訪ねました。長谷川研究室では、遠隔でのタイムラグをなくすことで、手術を行なったり、作業を行う、という研究のデモを見せていただきました。握るなどの感覚をどう伝えるかがポイントのようでした。
そのあとは合流して、1年生の授業を見学しました。今回のテーマが国際化ということもあって、コミュニケーション?イングリッシュという授業で、担当は人文学研究科の三輪晃司准教授、学生は情報学部と理学部の所属で、数名に分かれてグループワークをするスタイルでした。学生自身が設定したテーマについて話し合うというもので、授業中は日本語禁止、全て英語でした。英語が上達する最も早道は、英語でグループワークをすることだと思っています。もう少し上達したら、留学生を交えてディベートができると良いなと思いました。
授業のあとは、私が司会を務め、学生たちと経営協議会のメンバーとの懇談を行いました。最初に、学生時代に留学したい人、と手を挙げてもらったら、半分しか挙がらなかったのは、残念でした。行きたくない理由として、「名大の授業について行くのに精一杯」、というようなもの以外に、「海外が怖い」を挙げている学生がいました。犯罪や戦争のニュースなどが日常的に入ってきているので、平和な日本を離れたくない、ということなのだと思いますが、チャレンジして欲しいものです。そのためにも、本学として安心して留学に行けるような仕組みを構築してくことが肝心です。グローバル?マルチキャンパスという仕組みが出来上がりつつあります。これを梃子に留学を増やしていきたいと思っています。
11月29日
本日は、先日から行われている人材育成のプログラム、T-GExの現地調査の続きと講評がありました。T-GExは、『世界的課題を解決する知の「開拓者」育成事業』と銘打った、名古屋大学と岐阜大学が中心となって周辺の大学や企業と連携する事業で、対象はすでに研究者としてスタートをしていて、これから独立した研究者(PI)になる方、というものです。実質的な責任者であるプログラムディレクターは、法学研究科の武田宏子教授になります。
名古屋大学では、博士後期課程の学生から、博士研究員、助教、そしてPIへと、一貫して育成する若手研究者支援総合パッケージを策定しています。その中で、このプログラムは、最終段階、PIへと育成する部分に相当しています。こちら、国の「世界で活躍できる研究者育成プログラム総合支援事業」の一つとして選ばれてスタートしたものです。
今回は、プログラム委員会の委員が、実際に支援されている若手研究者と直に面談を行い、プログラムについて詳細な聞き取りを行いました。その中で指摘されたのが、T-GExプログラムの知名度です。学内に浸透していないために、高い競争率の中、選ばれた研究者たちですが、そもそも選ばれたことを知られていないこと、また、研究室においてもプログラム参加への配慮をしてもらえていないことなど、大変重要な指摘がされたと思っています。まずは、プログラムに選ばれた機会に私から証書を渡す、また、所属研究室の責任者には、研究担当副総長などしかるべき人がプログラム参加のお願いに行く、さらに大学のホームページでプログラム参加者リストを公開するなどの対応をとり、このプログラムに参加することへの誇りを持ってもらいたいと思っています。
- T-GEx:世界的課題を解決する知の「開拓者」育成事業
11月27日
本日からの1週間、怒涛の日程になっています。予定表を見てびっくり、5回あるはずのランチのうち4回が打ち合わせ、懇談会に当てられています。忘年会もスタートです。
さて、本日は、トラスコ中山株式会社という機械工具などの工場用副資材中心に、プロツールを供給するサプライヤー企業とのトップ懇談会がありました。さまざまな商品を巨大な倉庫(物流拠点)に在庫として格納、それを出荷する、そのプロセスに名古屋大学の自動化や最適化の技術が使える、というわけです。実際に、懇談の前には、連携する河口信夫未来社会創造機構(工学研究科兼務)教授の研究室を見学しましたが、巨大な物流拠点の人や商品の動きを映像データとして完全に保存、その再現を机上にて行ったデモはすごいものでした。トラスコ中山の中山社長?幹部たちも、一目で問題点がわかる、と感心しきりでした。
トップ懇談会の後は、ガラッと変わって、理学研究科の坂田?平田ホールへ行って、国際会議のオープニングスピーチです。この会議は、一般相対性理論?重力理論日本会議というもので、私の研究分野に関係します。毎年、日本のさまざまな大学がホストとして開催してきており、本学がホストする今回が32回目、私も1回目から何度も出席してきた思い出深い会議になります。100年以上前にアインシュタインによって発表された一般相対性理論、現在では大きく花開き、研究会の参加者も200名超、若い人がたくさん出席されていました。中には懐かしい顔もちらほら見えて、研究の現場が懐かしくなってしまいました。
11月26日
本日は、名古屋モビリティショー2023に行ってきました。ポートメッセなごやでの開催です。
特に公務というわけではないのですが、名古屋大学関係のスタートアップが展示をしているというので、見学させてもらいました。こちらは、じつは本体のモビリティショーではなく、会場の一角を借りて同時開催した「あいちITSワールド2023」への参加ということになります。名古屋大学発ベンチャーの株式会社エクセイド、株式会社ポットスチルを中心に見学させていただきました。まず自動運転のバスに乗せてもらい、路上を20km未満で走行。かわいいロボットがナビゲートします。ゆっくり運転がコンセプトですが、体感ではそれなりのスピードが出て驚かされました。ブースでは、ヨーロッパの企業が開発した運転シミュレーターや自動運転車椅子などの体験もさせていただきました。ありがとうございます。
本日一番驚かされたのが、名古屋大学フォーミュラチーム FEMが展示を行なっていたことです。学生サークル、頑張ってます。フォーミュラカーなのですが電気自動車、コックピットに乗せてもらったのですが、なかなか窮屈でした。
11月25日 ②
NExTプログラムの合間を縫って、名古屋大学文学部の創立75周年記念式典に出席、ご挨拶をしました。出席者は多くはありませんでしたが、大阪大学の栗原麻子文学部長をはじめ、文科省や同窓会などからの来賓もあり、関係者にとって良い会になったかと思います。
文学部は、名古屋帝国大学が新制の名古屋大学に変わる直前の1948年9月に設置されました。母体となったのは、戦中に名古屋高等商業学校から名称変更された名古屋経済専門学校と第八高等学校になります。それまで理系学部(医学、工学、理学)しかなかった名古屋大学ですが、この時に、法経学部と文学部が初めての文系学部として加わりました。しかし、一学部分の予算を法経?文学で分け合った結果、文学部は、哲学科?史学科?文学科、各々2講座の6講座、学生定員一学年40名という小規模で出発、キャンパスは名古屋城二の丸におかれたとのことです。小さく出発した文学部ですが、現在では、学部571名、大学院の人文学研究科には前期250名、後期185名が在籍、合わせて1000名を超える学生?院生が、学んでいるとのことですので、隔世の感があります。
文学部?人文学研究科に関係する新たな取り組みとして、来年4月には、「デジタル人文社会科学研究推進センター」が、文系部局を中心に全学組織として設置される予定です。ここでは、データサイエンス、AIなどを活用して、全く新たな文系の学問展開が進むのではないかと楽しみにしています。文学部?人文学研究科もこのセンターを大いに活用いただきたいと思います。
11月25日 ①
本日は土曜日ですが、名古屋大学のエクゼクティブプログラムであるNExTプログラムの公開講義?最終回に参加しました。会社のトップや、今後トップを担っていくであろう人材が参加するNExTプログラムも今回が4期目、名大の誇る講師陣による講演とその後のワークショップという形もしっかりとできてきて、満足度の高いプログラムに育ってきました。
午前中の公開講義では、工学研究科の小川浩平准教授が講義を担当されました。小川先生は10月に行われた世界の大学附属の高等研究所を結ぶネットワーク(通称UBIAS)の研究会でもお話いただいた先生で、アンドロイド研究で著名な方です。アンドロイド自身は、人間に似せたロボットということで、必ずしも自分自身で考えるものである必要はないのですが、近年のAIの進歩が大きくこれまでの状況を変えそうです。アトムのように自分で考えるアンドロイドの登場も間近かもしれません。実際に、小川先生ご自身、数年前に同じNExTプログラムで、AIの考え方は人間と大きく異なるので人間のように考えるAIの登場はまだ何十年も先だろう、と言ったことを今回は撤回され、生成系AIの用いる大規模言語モデルを用いると、近いうちにAIが人間と同じレベルになりそうだ、と述べていたことが非常に印象的でした。確かに人間を他の動物と区別するのは、多彩?多様な言語能力ですので、納得させられる部分はあります。そうなると、人間に残されるのは、「ひらめき」と言ったような、データを集めてくるだけでは到達できないような部分のみになるのでしょうか。
11月21日
今日は、今回の訪問の1番の目的である大学間協定等の調印式がありました。
朝一番に、まず学長棟へ行って、教育担当のシュバルツェ副学長にお話を伺いました。内容は主に、フライブルク大学がやっているCOILというオンラインプログラムについてです。これは、オンライン教材ではなく、遠隔地をつないでオンラインで一緒に教育をする、というものになります。フライブルク大学としては、連携している大学、中でも特に深い連携を予定している名古屋大学やストラスブール大学、さらにはノースカロライナ州立大学などを結んでやりたいということでした。そのために予算も準備していて、シュバルツェ副学長の熱意がすごく伝わってくるプレゼンと打ち合わせでした。言語の問題もあるのですが、例えば学部であれば、本学の英語のみの学位プログラムG30の教養教育を一緒にやる、大学院であれば、共同研究と直接結びつくような使い方が考えられそうです。
そのあとは、FRIAS(高等研究所)の建物に移動して、いよいよ調印式を執り行いました。日本学術振興会ボン研究連絡センターの林正彦センター長にも四時間をかけて来ていただき、なかなか盛大なセレモニーになりました。林センター長は、私が国立天文台にいた時の同僚で、国立天文台長を務められた方です。
協定書の調印に先立って、FRIASのファン?デン?ホッフ所長、クリーゲルシュタイン学長、そして私が挨拶をし、記念講演会として谷川寛樹環境学研究科教授とフライブルク大学のステファン?パウリュック教授の二人から、産業エコロジーについての発表がありました。二人には本学から研究費(シードファンド)を1年間提供し、共同研究をスタートしていただいています。谷川研究室の助教1名、大学院生3名がこの機会にフライブルク大学に短期滞在していて、この調印式にも出席していました。
調印式では、大学間協定を私とクリーゲルシュタイン学長がサインをし、さらに学生交流協定については、我々二人と共に、本学の水谷副総長(国際担当)、シュバルツェ副学長がサインを、ロードマップについては、水谷副総長とクラインシュミット副学長(国際担当)、さらに両大学から共同研究のため提供するシードファンドについて、水谷副総長とレンジング副学長(研究?社会連携担当)がサインをしました。
調印式の後は、若手の研究発表ということで先の谷川?パウリュック両研究室の方からの発表があり、その後、ランチを兼ねた交流会が行われました。若手の研究発表では、谷川研の山下奈穂助教が見事な発表ぶりで、内容、プレゼンどちらにも大変感心しました。交流会では、すでにお願いしてあったグリーゲルシュタイン学長の名大訪問の時期について話し、また林センター長からのスピーチがあったりして、互いの交流を深めることができました(写真参照)。谷川研の若い人たちとも短い時間ですがお話しでき、よかったです。それぞれしっかりと将来に向かっている姿は頼もしいものでした。
午後には、FRIASの若手研究者育成プログラムの説明を受けました。オンラインも駆使して、若手の国際連携ネットワークを構築しているとのこと、来年にはその中から5名が名大に来られ、本学の若手研究者と交流する機会を持つ予定となっています。どんなケミストリーが生まれるか、楽しみです。
夜には、クリーゲルシュタイン学長主催のディナーにご招待いただき、楽しい時間を過ごしました。彼女はなんでもフライブルク大学801代目学長とのこと、私は15代目ですが、建学以来566年と84年の差をまざまざと見せつけられました。なお、フライブルク大学での数え方は、任期を更新した場合には同じ学長であっても2と数えるので、彼女の前に800人いるわけではないようですが。
11月20日②
午後からは、今後の連携を具体的にどのように進めていくか、それを記した「ロードマップ」という協定書について、クリーゲルシュタイン学長と、クラインシュミット副学長(国際連携担当)、レンジング副学長(研究?社会連携担当)の3名らと打ち合わせをしました(写真参照)。場所は、学長棟で、こちらは戦後、フランス軍が使っていたのを1989年ベルリンの壁が壊されたのを契機に、その翌年大学に移管された建物です。最上階は、元はフェンシング場だった場所で、学長室や会議室はそのすぐ下の階にありました。建物の入り口には、巨大なアテネ像(知識を司る)があり、廊下には元学長などの肖像画が並んでいて壮観です。特に、会議室の前には、この大学を創設したオーストリア大公アルブレヒト6世の肖像画があるのですが、ハプスブルグ家特有のしゃくれた顎が目立っています。
ロードマップについては、お互いの交流を実のあるものにするために、かなり突っ込んで議論をしました。そのおかげで、時間がかなり超過して、次の生物シグナル研究拠点への訪問が遅れていました。こちらは、日本のWPIプログラムに似たもので、クラスターズ?オブ?エクセレンスというプログラムに選ばれている拠点です。フライグルク大学や近隣の研究所の6つの研究分野の研究者、170名ほどが集まって作っている拠点で、生命がどのように情報を伝えているかを総括的に研究しています。研究の内容もとても興味深いものでしたが、どのように異分野の研究者を交流させるか、女性研究者などダイバーシティをどのように確保するのか、優秀な若手研究者が引き抜かれた場合どうするか、などいろいろ参考になるお話しが聞けました。この拠点、例えば本学のITbMと連携できればなかなか面白そうだとも感じました。
この後の時間は、本学のヨーロッパセンターを訪ねました。フライグルク大学の高等研究所(FRIAS)の建物の一室に間借りしているのですが、それなりのスペースに必要なものが置かれているようでした。そこで、翌日の予定、特に調印式の手順の確認をした後、ホテルに帰りました。夕食は、レンジング副学長、クラインシュミット副学長、それに先方の国際担当の教職員と共に、近くのレストランへ行ったのですが、ドイツ料理とは思えないクオリティに驚かされました。また気候変動の影響で、以前はほとんど作ることのできなかった赤ワインがこの地域ではできるようになったそうです。
11月20日 ①
昨日から、ドイツのフライブルク市に来ています。三泊五日という忙しい旅になります。訪問の目的はフライグルク大学との連携協定の締結です。フライグルク市はドイツの南西部、フランス国境に近くスイス国境も近く、北東に60kmほどでシュトッツガルト、東に150kmほど行くとミュンヘンがあります。
フライグルク大学と名古屋大学は50年ほどの連携の歴史を持ち、特に両大学が持つ高等研究院(所)の間は活発な交流があり、10月31日に行われた、UBIAS(大学附置高等研究所ネットワーク)の会議にも先方の所長が出席されていました。
今後は、お互いに戦略的パートナー大学と定め、連携関係にある他の大学よりも一層の強力な連携を進めることを目指しています。同じく戦略的パートナー大学であるノースカロライナ州立大学やシンガポール国立大学と同様に、名古屋大学のグローバルキャンパスを設置、留学や研究交流の拠点としたいと考えています。すでにフライグルク大学には、本学のヨーロッパセンターが置かれているのですが、これを発展的解消して、ということになると思います。
初日の今日は、まず午前中、ユニゼウム(Uniseum)という大学の博物館にあたる施設を視察しました。こちらでは、シュヴァルツェ研究担当副学長が大学の説明をしてくださったあと、心理学専攻の大学院生が丁寧に施設の説明をしてくれました(写真参照)。この建物は戦争で一部が破壊されたとはいえ、大学の一番古い建造物になるとのこと、大学の創立は1457年、建物はそれからちょうど百年後の1557年に建築されたものになります。ドイツで3番目に古い大学だけあって、日本では室町時代、戦国時代、伝統と歴史を感じさせます。歴史の中で、ナチス時代のことにもきちんと触れていたのが、特に印象に残りました。有名な哲学者、マルティン?ハイデガーはフライグルク大学の出身で、ナチス時代に一年ほど大学の学長も務めているのですが、ナチスに利用された、という評価のようです。
さて、大学院生が特に力を入れて説明していたのが、大学本部の正面に置かれた2つの石像、ホメロス(左)とアリストテレス(右)です。この二人が、文学?詩?芸術と科学?哲学を象徴する、というわけです。この像の前で、クリーゲルシュタイン学長と取った写真を載せておきます。
昼は、クリーゲルシュタイン学長とクラインシュミット国際担当副学長、さらに国際担当の方々とご一緒にランチをとりました。本格的なドイツ料理もあったのですが、あまりに重そうなので、魚料理を選びました。ライン川にも程近く、鱒などの養殖も盛んのようで、魚はなかなかでした。
私は父の留学の関係で、ニュルンベルよりも少し北にあるエルランゲン市というところで生まれているのですが、なんとクリーゲルシュタイン学長も同じ街の生まれ、彼女の方が二年ほど後になるとのことだったのですが、おそらく同じ病院で生まれたようで、急に親近感が湧きました。もともと化学の研究者からスタートされ、解剖学に進まれ、フライグルク大学では医学部長をされた後、近隣の学長に選ばれ、数年後、フライグルク大学に学長として戻られたとのこと。ドイツでは学長は公募制で、チャレンジとして他の大学の学長に応募したところ通ってしまった、と笑っていらっしゃいました。
11月18日
今日は、土曜日ですが、至学館大学に朝からお邪魔しています。
以前、自由闊達通信でも書いたのですが、2026年に愛知県を主な舞台として開催されるアジア?アジアパラ競技大会、そのための大学連携事業キックオフイベント~大会を盛り上げるアイデアを考えよう!~、に出席するためです。
至学館大学は、以前は中京女子大学という名前で、スポーツ、とりわけ女子レスリングでは、吉田沙保里さんをはじめとして数多のメダリストを輩出していることで知られています。今回は、愛知学長懇話会の下に設けられた2026年アジア競技大会?アジアパラ競技大会専門委員会の事業として、100名ほどの学生に出席いただいて、大会を学生ボランティアとしてどのように盛り上げるのか、アイデア出しをワークショップ形式で行う、というイベントです。
ワークショップに先立って、挨拶を差し上げましたが、その後は、実際にアジア?アジアパラ大会に出場したことのある5名の現役や元アスリートの方々のパネル討論が行われました。取り回しは、谷岡至学館大学学長でした。出席者の中には、数週間前に行われたアジア?アジアパラ杭州大会に出場されメダルを取られた方もおられて、なんと金メダルの実物を学生たちに回して触ってもらう、という豪華な一幕もありました。私も触らせていただいたいのですが、ずっしりと重いメダルでした。もちろん決して齧ってはいけません。なお、出席者のお一人、パラ柔道の廣瀬誠選手は、2004年のアテネ大会での銀メダル以来、長く現役を続けられて今回も杭州大会に出場されたとのことですが、西尾市出身で愛知県立名古屋盲学校の教員、本学で柔道教室を行なっていただいた方になります。あらためまして感謝です。
今のところ、名古屋大学からはほとんど学生ボランティアに参加していませんが、これから、是非、多くの学生が参加し、国際交流を深め、多様性を学んでいただきたいと思います。
11月16日
本日の夕刻、ショッキングなニュースが飛び込んできました。近藤孝男先生がお亡くなりになったとのことです。近藤先生は、本学理学研究科の教授を長年務められ、定年後も大型研究費を獲得されたこともあり活発に研究を続けてこられました。研究分野は植物における生物時計、すなわち植物が24時間を感じる仕組み(概日リズム)の解明でした。そこで働いている遺伝子や特別なタンパク質を発見した業績は世界的にも高く評価され、紫綬褒章、日本学士院賞、文化功労者、米国科学アカデミーのギルバート?モルガン?スミス?メダルなど数多の栄誉を受けられました。本学としても、ノーベル賞受賞者らと並んで特別教授の称号、さらに名古屋大学レクチャーシップを授与し、その研究成果を称えてきたところです。名古屋大学の現役時代には、高等研究院長、理学研究科長などの要職を歴任されました。
私が名古屋大学に着任した2006年はちょうど近藤先生が理学研究科長を務められていらっしゃった時期でした。つまり辞令をいただいたのが近藤先生からであり、教授会の司会も近藤先生でした。忘れもしません、出席した最初の教授会でものすごく生意気な発言をしたことを思い出します。一つが、着任前の教授会で説明があった件の議決に関して、「今回からの出席なので、説明を受けていないので投票できない」と言ったこと、もう一つが、博士論文の審査での概要説明に対して、生命系の内容のものだったのですが、全く理解ができなかったので、「全く理解できないのだが、単に形式的な審査なのか。もし本当に審査するならわかる言葉で説明して欲しい」と言ったこと、の二つの発言でした。その後の教授会でも、新人がこんな発言をしたことは今に至るまで一度もないので、空気を読まない生意気な発言ということで良いのだと思います。しかし、そんな私の発言に対して、近藤先生はとても真摯に対応いただき、あろうことか、面白い奴が物理に入ってきた、と気に入っていただけたようでした。実際にその後、近藤先生から高等研究院の副院長に抜擢いただいたこと、2008年の小林先生、益川先生のノーベル賞受賞を契機として本学の物理分野に大きなお金が国からつくことになった時に、その使い道の具体案を私に託してくださったことなどが、思い出されます。後者は、素粒子宇宙起源研究所(KMI)として実を結びました。
近藤先生は、味方には本当に頼もしく、敵に回すと極めて厄介な、肝が据った真のリーダーでした。私のことはずっと気にかけてくださいました。感謝の念にたえません。ご冥福をお祈りします。
11月15日
本日は、国連食糧農業機関(FAO)のベス?ベクドル事務局次長が、学生たちを対象にレクチャーを行なうということで来訪されました。そこで、レクチャーに先立ってお話しをさせていただきました。なかなか面白いキャリアをお持ちの方です。もともとアメリカの中西部?インディアナ州の15,000人しか住んでいない小さな町で7代にわたって農業を営んでいる家庭に生まれ、そこから出たくてワシントンDCに行って政治などの世界に身を置いたのに結局故郷に戻ったこと、また、故郷で活動していたらそれが認められて、3年前にいきなり電話で誘われて今のポストについたこと、FAOの本部のあるローマに着いたその週にコロナ禍で国全体がロックダウンして大変苦労したことなど、気さくに語って下さいました。
その後、ご自身の講演では、FAOの役割を中心に熱く語っていらっしゃいました。学生を中心にオンサイトでの参加が100名近く、またオンラインでさらに200-300人ぐらいが視聴、と大人気の講演会で、皆さん満足されたのではないかと思います。
講演の後は、オンラインで外務省の方に、国際機関にどのように就職するのか、というお話しをいただき、最後は、ベスさん(と呼ぶようにとの要求でした)と学生の対話、という形でさらに盛り上がっていましたが、次の会議の予定が迫ったため、中座しなければいけなかったのは大変残念でした。
本学からは、国際開発研究科など一部を除き、国際機関で就職する人は少ないので、この機会にそこを目指す学生が一人でも増えると良いなと思っています。
11月13日
ここのところ、打ち合わせが中心でイベント的なものがあまりなく過ごしています。
この間、先週の金曜日には私が卒業した高校に行って、名古屋大学の説明と宇宙の話を高校生にしてきました。神奈川県の高校なのですが、三年生二人が名大を受験する、と力強く話してくれたので、大変喜んでいます。男女一名ずつで、工学部の学科を目指しているとのことでした。
先週土曜日には、「日本学術会議の在り方に関する検討状況等についての会員説明会」がオンラインにて行われたので自宅から出席しました。任命拒否問題から混迷を深めている日本学術会議ですが、在り方を検討する有識者懇談会なるものが内閣府に作られ、そこからの提言が年内には出る予定となっています。その前哨戦として、今は内閣府、つまり政府に直に設置されている日本学術会議を、独立行政法人化する方向性が示されそう、という点についての説明会でした。説明会では、文系の人たちが所属する第一部の委員が多く意見を述べていました。論客揃いですね。いずれにせよ、国立大学が国立大学法人になった時のことを思うと、独自に予算が取りにくい日本学術会議が独立法人化された未来は、とても明るいものとはいえそうにないと感じました。
急に寒くなってきて、夜空がきれいに見えるようになってきました。今、夕方暗くなると木星が東に明るく輝いています。よく気をつけて見ると、その左下あたりに、チカチカとまたたく星の集団が見つかります。すばるです。平安の昔に清少納言が「星はすばる」と枕草子の中で述べていることでも有名ですが、とにかく美しいので、是非見つけてみてください。その正体は1000個にもなる星の集団(散開星団)なのですが、そのうちの数個の明るい星が肉眼で見えているということです。すごく条件が良ければ、6つの星が見るとのこと、皆さんも幾つ見えるか是非、チャレンジしてみてください。なお、そのことから、すばるは六連星(むつらぼし)としても知られていました。
11月9日
今週は、特段大きなイベントもなく、淡々と毎日会議?会議で進行しています。
その中で、本日は、モンゴルの国会議員であるウンダルムさんが表敬訪問してくださいました。ウンダルムさんは、名古屋大学の経済学研究科で博士号を取られている女性で、前職ではモンゴル国立大学の副学長を務められ、2020年から国会議員をされています。
今回は、秘書のマンチェクさん、こちらも元モンゴル科学技術大学エルデネット校副学長で本学の卒業生の女性ですが、とともに訪問いただきました。来日の目的は、中高の校長先生たち35人ほどを引き連れて、本学の博物館がやっている「地球教室」の視察が中心とのことでした。地球教室は、子どもの理科離れ対策の一環として、近隣の小中学生を対象に行なっているもので、例えば河原で石の包丁を作るなどのイベントなどを開催しています。ウンダルムさんは、モンゴルでもロシアとの国境に近い北部のセレンゲ県というところが選挙区だそうです。森が豊かで、モンゴルでは珍しく小麦や野菜の栽培が盛んとのことでした。平原がどこまでも続くというモンゴルのイメージとはだいぶ違っていそうです。
本日からは、名古屋大学の部局の大部分を対象にした総長?執行部との対話のスタートです。以前策定した「部局中長期ビジョン」がちょうど半分の5年を迎えるところで、達成状況の確認と修正案を報告いただくとともに、中でも大学全体で課題となっている博士後期課程の定員充足問題への取り組みと、女性教員の増員、さらに部局長の任期などを話題に対話を進めることとなっています。
本日は初日ですが、法政国際教育研究センター(CALE)、環境学研究科、素粒子宇宙起源研究センター(KMI)の3つについて各々一時間ずつ行いました。みなさん、非常に頑張って進められている取り組みをご紹介いただいたこともあり、一時間は本当にあっという間でした。これから年末、そして年初にかけて、進めてまいります。
11月5日
本日は、名古屋大学が11年ぶりに東海代表として出走する、全日本大学駅伝が行われ、激励のため、早朝に熱田神宮に向かいました。8時10分スタートということで、朝7時半に到着した時にはすでに多くの関係者や観衆が集まっていて、テレビのリハも行われ、熱気に溢れる神宮でした。名大陸上部の前部長で東海学生陸上競技連盟会長でもある國枝秀世さん(名古屋大学元理事)に案内してもらい、関係者の札を首からかけて、熱田神宮の中を名大のテントを目指して移動していると、熱田神宮の宮司さんや日本学生陸上競技連合の松本正之会長などに遭遇。松本会長は、本学法学部の卒業生で、JR東海社長やNHK会長を歴任された方です。しかしなんといっても一番感激したのは、増田明美さんです。テレビでの熱い口調そのままで、本学卒業生の鈴木亜由子さんについて語ってくださいました。
人々が行き交う中、アップを終えて帰ってきた一区の小川選手になんとか声をかけることができたので、応援のために沿道に移動しました。関東や関西の有力校は、スペースが確保されていて、応援団はもとよりブラスやチアリーダーたちが加わって派手な応援を繰り広げていたのですが、それ以外の大学はノボリを立てて集まっているだけ、当然本学もこちらの組です。と思って、ノボリを目印に探したのですが、なかなか見つからず。結局、ノボリは中継所などに持っていってしまっていて、スタート地点にはなかったとのこと。地元なのに、一番目立たない名古屋大学でした。なんとか鹿児島大のノボリのそばに陣取っている本学陸上部OB/OGたちを見つけ、一緒にスタートを見届けて、帰りました。
みなさんすでに結果はご存知の通りですが、駅伝チーム、大健闘でした。ただ、最終結果は目標としていた18位には一歩及ばず19位という成績、18位に入れば来年の東海枠が2と倍増するところだったのですが、残念。しかし、出走メンバー8人のうち7人が工学や理学など理系の学部生?院生で、合宿中も課題に追われる中、本当に頑張ったと思います。お疲れ様でした。
11月1日
今日からは、11月です。冬もすぐそこまで来ています。本日から、大学の東山キャンパスに車で入構する際のゲートが変わりました。まだ体験していないのですが、自動でナンバーを読み取るとのこと、利便性が高まると良いですね。
本日は、「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」リーダーミーティングにオンラインで参加しました。内閣府の主催で産官学の(男性)トップリーダーが集い、女性活躍加速のための取り組みをシェアし、行動宣言を行う、というものになります。今回のテーマは二つ、(1)女性役員の登用など経営層?意思決定層におけるダイバーシティの確保、(2) 男性の育児休業の現状?課題?取組、又は男女間賃金格差の要因と解消のための取組、についてでした。100人以上がハイブリッドで出席、それぞれ5名程度のグループに分かれて、テーマに関する取り組みと課題などを報告、ディスカッションを行い、最後に全員集まって、各々ボードに行動宣言を書き込む、というものでした。
参加してみての感想ですが、本学を含む大学はもとより、やはり企業などでも経営層には女性がなかなか少ない現状は日本全体の問題と思いました。一方、育児休暇ですが、企業では男性の取得率、かなり上がっているようで、半分程度から60%などという高い数字を伺ってびっくりしました。本学の今年度の実績は昨年度に比べれば伸びてはいるものの、未だ20%程度で改善の余地が大きいですね。今年度から、出生後8週間以内に最大4週間取得でき、しかも2回まで分割可能、という「出生児育児休業(産後パパ育休)」を導入したことで、6.8%から19%まで伸びた、ということですので、伸び代はありそうです。